外国人の社会保険・労災保険・雇用保険の加入義務
社労士が解説する制度改正と実務対応のポイント(2025年版)
はじめに
外国人を雇用する企業にとって、「保険加入義務は国籍ではなく雇用条件で決まる」という原則は、最初に押さえておくべき重要事項です。社労士の立場から見れば、保険未加入は企業の法令違反として行政指導や追徴金の対象となる可能性があります。さらに、在留資格の更新や永住申請にも影響を及ぼすため、労務管理と入管対応の両面から慎重な運用が求められます。
2025年の法改正により、社会保険の加入対象が拡大され、外国人雇用における実務対応も見直しが必要になっています。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
- 企業規模要件の撤廃: 従業員数51人以上という条件が廃止され、企業規模に関係なく適用(2026年以降段階的施行予定)
- 賃金要件の見直し: 月収8.8万円以上の条件が緩和され、勤務時間と雇用期間で判断する方向へ(詳細は今後発表)
- 対象拡大: 週20時間以上勤務かつ2ヶ月超の雇用見込みがあれば、原則加入義務あり
外国人雇用での注意点: 在留資格が「短期滞在」「外交」「公用」の場合は原則として対象外。「技能実習」・「特定技能」・「技術・人文知識・国際業務」など、在留資格ごとの就労制限と整合性を確認。社会保険未加入のまま在留資格更新を申請すると、「適正な雇用管理がなされていない」と判断される可能性あり。
労災保険(労働者災害補償保険)
- 雇用形態・国籍を問わず、労働者として働くすべての人が対象
- 技能実習生・特定技能外国人も対象
- 保険料は全額事業主負担。加入漏れは重大な労務リスク
- 業務中の事故対応に備え、制度説明と社内体制の整備が必要
雇用保険
- 週20時間以上勤務かつ31日以上の雇用見込みがある場合、国籍を問わず加入義務あり
- 在留資格「留学」(昼間学生)の外国人は原則対象外
- 雇用契約書に「雇用期間」「労働時間」を明記することが重要
- 雇用保険未加入だと、失業給付・育児休業給付などの制度が利用できない
実務対応のポイント(社労士視点)
- 雇用契約書・労働条件通知書に保険加入の有無を明記する
- 在留資格と雇用条件の整合性を確認する(特定技能・技術人文など)
- 保険加入漏れがないか、入社時チェックリストを活用する
- 保険加入状況がビザ更新・永住申請に影響することを理解する
- 社会保険の改正内容を社内で共有し、就業規則・人事制度に反映する
よくある誤解とリスク
| 誤解 | 実際のルール | リスク |
|---|---|---|
| 外国人だから保険は任意 | 国籍ではなく雇用条件で判断 | 未加入による行政指導・追徴金 |
| 短期契約だから不要 | 31日以上の見込みがあれば加入義務 | 雇用保険未加入で失業給付不可 |
| 技能実習生は対象外 | 労災保険は全員対象 | 業務中の事故で補償されない |
| 保険料を本人が希望しない | 加入は義務。本人の意思ではなく法令で決まる | 加入漏れで企業責任が問われる |
まとめ
外国人雇用における保険加入義務は、「国籍」ではなく「雇用条件」で判断されます。2025年の法改正により、社会保険の加入対象が拡大され、企業規模や賃金要件に関係なく、より広範な労働者が対象となる方向に進んでいます。社労士の視点から見れば、保険未加入は企業の法令違反となり、労務トラブルや行政リスクにつながります。
入社時点での保険加入チェックと、契約書・申請書類の整合性確認が、安定した外国人雇用の第一歩です。
本記事の位置づけとご注意
本記事は、2025年11月時点の制度および改正情報を反映した内容です。社会保険の加入義務に関する法改正はすでに成立していますが、施行は今後段階的に進められる予定です。実務対応にあたっては、最新の施行時期・対象範囲を厚生労働省の公式情報等でご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
