社会保険労務士コラム

雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?

  • 2025.11.2

雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?|法的義務・記載項目・兼用の可否を社労士が解説

この記事のポイント:
・雇用契約書は任意、労働条件通知書は法的義務
・署名・押印は義務ではないが証拠力として有効
・兼用する場合は記載項目と署名欄に注意

はじめに

従業員を雇用する際に作成される「雇用契約書」と「労働条件通知書」。似たような内容に見えるこれらの書類ですが、法的な位置づけや目的は異なります。この記事では、両者の違いと実務上の使い分け、兼用の可否について、社労士の視点からわかりやすく解説します。

雇用契約書とは?

  • 定義:労働者と使用者が労働条件に合意したことを証明する契約書
  • 法的根拠:民法第622条(口頭でも契約は成立)
  • 署名・押印:法的義務はないが、契約の合意を証明する手段として有効。署名欄ありが望ましい。
  • 役割:労働契約の成立を証明する「合意書」的な性格

労働条件通知書とは?

  • 定義:労働基準法第15条に基づき、使用者が労働者に交付する義務のある書面
  • 法的根拠:労働基準法第15条、施行規則第5条
  • 署名・押印:使用者が一方的に交付するため署名不要。交付記録を残すと安心。
  • 役割:労働条件の明示義務を果たす「通知書」的な性格

両者の違いを比較

項目 雇用契約書 労働条件通知書
法的義務 任意(民法) 義務(労基法第15条)
署名・押印 法的義務はないが、合意の証拠として有効 不要。交付記録を残すと安心
目的 契約の合意を証明 労働条件の明示
記載項目 自由(実務上は詳細に記載) 法定の明示事項あり
証拠力 高い(トラブル時に有効) 補助的資料として活用

兼用は可能?

「労働条件通知書兼雇用契約書」として1枚にまとめることも可能です。ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 法定の明示事項をすべて網羅していること
  • 労使双方の署名・押印があること(電子署名でも可)
  • 2部作成し、労使で1部ずつ保管すること

実務上のおすすめ対応

  • 最低限、労働条件通知書は必ず交付(法的義務)
  • 雇用契約書も作成すれば、トラブル防止に有効
  • 兼用する場合は、記載項目と署名欄の有無に注意
  • 2024年改正で明示事項が増加しているため、様式の見直しが必要

まとめ

「雇用契約書」と「労働条件通知書」は似て非なる書類です。労働条件通知書は法的義務、雇用契約書は任意だが証拠力が高いという違いを理解し、実務に応じて適切に使い分けましょう。兼用も可能ですが、法定項目の網羅と署名・押印の有無に注意が必要です。

関連リンク

外国人雇用はこちら
外国人雇用福岡.com