社会保険労務士コラム

2024年施行:労働条件通知書の記載事項の改正

  • 2025.11.6

✅ 2024年4月施行:労働条件通知書の記載事項の改正

有期契約者への更新上限・無期転換の明示が義務化/すべての労働者に「変更の範囲」も追加

改正の背景と目的

2024年4月1日、労働基準法施行規則第5条が改正され、労働条件通知書の記載事項が拡充されました。
働き方の多様化(副業・兼業・有期雇用・リモート勤務等)に対応し、労働契約の透明性と予見可能性を高めることが目的です。
改正は、厚生労働省令第39号(令和5年3月30日公布)および雇止め告示の改正に基づいています。

改正された記載事項一覧(対象別・注記付き)

明示項目 内容 対象 改正根拠 注記
就業場所の変更範囲 将来の配置転換等により変わり得る就業場所の範囲を明示 すべての労働者 労基則第5条第1項 ※1
業務内容の変更範囲 将来の業務変更可能性の範囲を明示 すべての労働者 労基則第5条第1項 ※1
契約更新の有無 契約が更新される可能性の有無を明示 有期契約労働者 労基則第5条第1項
契約更新の判断基準 勤務成績・業務量等の更新判断基準を明示 有期契約労働者 労基則第5条第1項
更新上限の有無と内容 通算契約期間または更新回数の上限を明示 有期契約労働者 労基則第5条第1項 ※2
無期転換申込機会の明示 無期転換ルールの対象である旨と申込機会を明示 有期契約労働者 労基則第5条第1項 ※3
無期転換後の労働条件の明示 無期転換後の賃金・業務等の条件を説明 有期契約労働者 労基則第5条第1項・労契法第18条 ※3・※4
更新上限の新設・短縮時の説明 更新上限を新たに設ける/短縮する場合の事前説明 有期契約労働者 雇止め告示 ※2

❓ よくある質問(FAQ)【2024年改正対応】

1. 新たな明示ルールの適用時期・対象者について

Q1. 既存の労働者にも新ルールで再明示が必要ですか?
不要です。令和6年4月1日以降に締結される労働契約から新ルールが適用されます。
ただし、再明示は望ましい取組です。
※有期契約労働者は、令和6年4月1日以降の契約更新時に新ルールでの明示が必要です。
Q2. 契約開始日が令和6年4月1日以降でも、契約締結が3月以前なら新ルールでの明示は必要?
いいえ。契約締結時点のルールが適用されるため、令和6年3月以前に締結された契約には旧ルールが適用されます。
ただし、令和6年3月以前から新ルールに基づいて明示することは望ましい対応です。

2. 「変更の範囲」の明示について

Q3. 「変更の範囲」は契約期間中のみでよい?【※1】
はい。契約期間中に命じる可能性がある範囲を明示すれば足ります。
更新後の契約期間における変更範囲は、明示義務ではありませんが、キャリアパスの観点から積極的明示は有益です。
Q4. 日雇い労働者にも「変更の範囲」の明示は必要?
不要です。雇入れ日における就業場所・業務を明示すれば、「変更の範囲」も満たしたとみなされます。

3. 更新上限の明示について

Q5. 更新回数は「残り回数」か「通算回数」か?【※2】
どちらでも構いませんが、労使の認識が一致するように明示することが重要です。
例:「通算5回まで。現在3回目」など。
Q6. 更新上限がない場合も「上限なし」と明示すべき?
義務ではありません。ただし、モデル様式では「上限なし」と記載する欄が設けられています。
Q7. 雇用期間の終期を明示すれば、通算契約期間の明示とすることは可能ですか?
はい。「最長○年○月○日まで」といった終期の明示で、通算契約期間の明示とすることは可能です。
Q8. 更新上限を新設・短縮する場合、説明義務はある?【※2】
はい。雇止め告示により、契約締結前にその理由を説明する義務があります。
※労働者の納得までは求められていません。
Q9. 更新上限の定めがあるのに通知書に記載がない場合、契約は「上限なし」とみなされる?
いいえ。記載漏れは労基法15条違反ですが、契約が自動的に「上限なし」となるわけではありません。
最終的には合意の有無等を踏まえ司法判断となります。

4. 無期転換申込機会の明示について

Q10. 無期転換申込権を行使しないと表明している労働者にも、申込機会の明示は必要?【※3】
はい。申込権の有無にかかわらず、申込機会の明示は義務です。
Q11. 日雇い労働者にも無期転換申込権は発生する?
理論上は発生し得ますが、実務上は想定困難なため、モデル様式には記載していません。
Q12. 無期転換後の労働条件が「変更なし」の場合、書面と口頭の両方で明示が必要?【※4】
原則として、有期労働契約の労働条件として書面で明示している事項に関して、無期転換後も変更がない旨を明示すれば足ります。
ただし、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」は、パートタイム・有期雇用労働法に基づく書面明示事項であり、有期契約時点で書面明示されている前提で「変更なし」と明示することが可能です。
書面・口頭の両方の明示事項すべてに変更がない場合に限り、「変更なし」の一括明示が許容されます。
Q13. 書面は変更なしだが、口頭明示事項に変更がある場合は?
口頭で変更内容を明示すれば対応可能ですが、労働者が理解できるよう十分な説明が必要です。
Q14. 無期転換後の労働条件が更新時の明示と異なる場合、減額された賃金を支払うと違法?
変更の合理性が認められない場合は、労基法24条違反となる可能性があります。
就業規則や個別契約による「別段の定め」がある場合でも、変更が真の合意に基づくかどうかは最終的に司法判断となります。

5. 就業規則の周知について

Q15. モデル通知書に「就業規則の確認方法」欄が追加されたのは法改正?
いいえ。これは法改正ではなく、令和4年の労働政策審議会報告と施行通達に基づく対応です。
労基法106条・労基則52条の2により、労働者が容易に確認できる状態にすることが義務です。

注記一覧(※1〜※4)

  • ※1:「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
  • ※2:雇止め告示の改正により、更新上限の新設・短縮時には契約締結前の説明が必要です。
  • ※3:無期転換申込権が発生した後の契約更新時には、申込機会と転換後条件を毎回明示する義務があります。
  • ※4:原則として、有期労働契約の労働条件として書面で明示している事項に関して、無期転換後も当該条件と変更がない旨を明示したものとされます。
    「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」は、パートタイム・有期雇用労働法に基づく書面明示事項であるため、有期契約時点で書面明示されている前提で「変更なし」と明示することが可能です。

✅ まとめ

2024年4月の改正により、労働条件通知書の記載事項は「すべての労働者向け」と「有期契約者限定」で明示義務が強化されました。
特に有期契約者には、更新上限・無期転換・均衡説明など、契約更新のたびに明示すべき項目が増加しています。
人事・労務担当者は、雇用形態別の様式整備と運用ルールの見直しを早急に進める必要があります。

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