第10回「外国人の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和3年度改訂)」が決定されました。
新型コロナウイルス感染症の影響により、国際的な人の往来が一時的に停止されており、新たに入国する外国人は大幅に減少しました。しかし、日本に在留する外国人は約289万人と令和元年よりも少し減ったものの、日本で就労する外国人は令和2年10月時点では約172万人と過去最高を記録しています。
このようなことから、新型コロナウイルス感染症への対応を適切に行うとともに、外国人材を円滑かつ適正に受け入れ、受入れ環境を更に充実させる必要があることから、197の施策が策定されています。
外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策では、大きく分けて以下の6つの項目が取り組まれています。
〇外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等
〇円滑なコミュニケーション・情報収集のための支援
〇ライフステージ・生活シーンに応じた支援
〇非常時における外国人向けのセーフティネット・支援等
〇外国人材の円滑かつ適正な受入れ
〇共生社会の基盤としての在留管理体制の構築
今回は、「共生社会の基盤としての在留管理体制の構築」について概要を見ていきます。
(1)在留資格手続の円滑化・迅速化
〇在留手続等に係る手数料の電子納付等の利便性向上を図る施策の検討
〇外国人本人によるオンライン申請の利用の実現、オンライン化対象となる手続の拡大の検討
〇令和7年度中の交付開始に向けた在留カードとマイナンバーカードとの一体化の検討
日本における中長期在留者の増加に伴い、地方出入国在留管理官署の窓口が混雑し、在留諸申請のための待ち時間が長時間に及んでいる。また、在留諸申請の増加に伴い、地方出入国在留管理官署においては各種問合せへの対応や申請書類の管理等の業務が増加し、円滑かつ迅速な在留資格手続に支障を来している上、「特定技能」の在留資格の創設に伴い、日本での就労を希望する外国人が増加することも見込まれる。
こうしたことから、在留外国人が地方出入国在留管理官署の窓口において在留諸申請の受付のために長時間待つことのないよう、外国人の負担軽減を図るとともに、在留資格手続の円滑化・迅速化を図るため、申請手続の合理化を進める必要がある。
(2)在留管理基盤の強化
〇関係省庁及び地方公共団体等の連携による在留外国人の住居地情報の整備
今後、外国人材の受入れはますます拡大し、その活動も多岐にわたっていくと考えられることから、外国人の在留状況・就労状況等を迅速かつ正確に把握し、的確な在留管理を行うことがこれまで以上に重要になると考えられる。
現状では、いずれの省庁の統計においても、どの業種・職種に外国人がどの程度受け入れられているかを正確に把握することができない状況にあるが、外国人材の受入れの効果測定等を的確に行うためには、それらを統計上把握できるようにする仕組みが必要である。
また、出入国在留管理庁での在留諸申請において、提出書類の偽造が疑われる案件が確認されていることから、在留資格についての確実な在留審査を実施する必要がある。
あわせて、きめ細かく、かつ、機能的な在留管理等を実施するため、法務省の体制を整備することも求められている。
(3)留学生の在籍管理の徹底
〇留学生の在籍管理が不適切な大学等に対する、留学生の受入れを認めない等の在留資格審査の厳格化
就労目的の留学生や在籍管理が不十分な教育機関の存在が指摘されているところ、令和元年6月に策定した留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針を着実に具体化していくとともに、令和元年8月に改正を行った日本語教育機関の告示基準を適切に運用するなどして、日本語教育機関の適正化や質の向上及び留学生の在籍管理の徹底を図っていく必要がある。
(4)技能実習制度の更なる適正化
〇出入国在留管理庁と技能実習機構が連携して行う調査の強化等による技能実習制度の適正化
〇失踪技能実習生対策としての実地検査の強化、失踪者の多い送出機関からの新規受入れ停止
〇技能実習生と日本人との同等報酬等の確認・働き方改革関連法の周知の徹底
〇解雇された技能実習生への監理団体による着実な転籍支援の実施、実習生の継続的な状況把握による適切な転職支援
〇技能実習生のプライバシーや感染予防に配慮した住環境を確保する実習実施者に対する優遇措置
技能実習制度については、低賃金等の劣悪な実習環境の問題が指摘されていたことを踏まえ、平成29年11月から、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の下で新たな制度が施行され、適正化に向けた取組が進められていることから、その運用も見守りつつ、技能実習制度における不正な行為に対して厳正に対処していく必要がある。
(5)不法滞在者等への対策強化
〇外国人雇用状況届出情報等の収集・分析機能強化による効果的な摘発の実施
日本には依然として多数の不法滞在者が存在し、その多くが不法就労に及んでいるとみられる上、近年、その手口は悪質・巧妙化し、悪質な仲介事業者等が関与する事案も後を絶たない状況にある。また、主たる在留目的が就労にあるにもかかわらず、留学目的と偽って就労をする者も少なからず見受けられるとの指摘もなされている。
さらに、退去強制業務は出入国在留管理行政のいわば最後のとりでであり、その機能不全は日本の社会秩序や治安にも大きな影響を与えるところ、これらの不法滞在者等の送還に当たっては、送還忌避者の増加及び収容の長期化の問題があり、同問題を解決することは喫緊の課題であることから、仮放免等の運用の適正化を図るほか、制度の在り方について、有識者の議論等も踏まえつつ、法整備上の措置を含め検討を行う必要がある。今後、外国人の受入れがますます拡大していく見込みであることも踏まえ、不法滞在・不法就労等の撲滅に向けた取締り及びその送還に一層強力に取り組む必要がある。
以前に比べると日本で生活する外国人は増えており、多くの方がそれを実感しているかと思います。これまでは外国人を見かけることが珍しかった地方でも、頻繁に見かけるようになりました。
このように日本で生活する外国人の方が増えている現状では、共生社会を実現することは非常に重要な意味を持つのではないかと思います。
在留手続の分野では、出入国在留管理局窓口の混雑緩和や在留外国人の管理(特に留学生、技能実習、不法滞在者)などの強化が進められています。
日本に中長期に在留する外国人は、これからますます増加することが予想されますが、在留管理体制が整っていない状況では在留手続の円滑な運用が実現できません。一方で、在留管理体制の整備を急ぎすぎて、外国人の人権などがないがしろにされることがないように配慮する必要もあります。
これらを踏まえて上で、適正な在留管理体制を整備する必要があるように思います。