日本政府による留学生30万人計画の方針が示されて以来、多くの留学生が来日してきました。2020年末現在では、新型コロナウイルス感染症の影響により留学生の数は30万人を下回っていますが、2017年以降は30万人以上を維持していました。
日本に留学する動機は様々あるかと思いますが、日本政府としては外国人留学生の卒業後にも日本にとどまって就労してほしいという意図があったものと考えられます。
外国人が日本で就労をするためには、就労系の在留資格(通称「就労ビザ」)が必要ですが、就職をする留学生の多くは在留資格「技術・人文知識・国際業務」へ在留資格を変更します。
そこで、これまで公表されている統計を用いて、留学生と就労ビザの関係性について考えてみます。
〇留学生と就労ビザの推移
(「出入国在留管理庁ホームページ」参照)
(「出入国在留管理庁ホームページ」参照)
毎年の留学生の新規入国者数と技術・人文知識・国際業務(以下「就労ビザ」と記載します。)の新規入国者数を考慮すると、既に日本に在留している外国人の就労ビザの増加が少ないように感じられます。就労ビザで出国する人などがいることも排除できないため、一概には言えませんが、それでも就労ビザの増加が少なくなっていることが分かります。
この理由として、留学生の就職率が低いこと・留学生が日本で学んだことが就職に直結しないこと・留学生が学校で学んだことと就職先での業務内容に関連性がないこと等が考えられます。
〇留学生の就労ビザ不許可率
(「出入国在留管理庁ホームページ」参照)
留学生が就職を目的とする在留資格変更許可申請については、10年前に比べると増加しており、毎年の申請数も増加しています。しかし、その不許可率に注目してみると、以前から徐々に不許可率が高くなっており、2019年では不許可率が20%になっています。つまり、5人に1人は不許可になっているということになります。
この不許可率の高まりは、技能実習や特定技能などの就労可能な新たな在留資格の創設等によって、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の活動範疇が弾力的に狭くなってきた結果、審査が厳しくなっていることが一つの要因として考えられます。
留学生が就職するための在留資格「技術・人文知識・国際業務」(就労ビザ)については、「学校で学んだ内容」と「就職先での業務内容」の関連性についても審査がされます。特に、専門学校を卒業した留学生については、厳格に審査がされることとなります。
そのため、企業が留学生を採用しようとする場合には、人選の段階から適正な判断をする必要があります。留学生の就労ビザのうち、5人に1人は不許可となるため、内定通知を出したものの就労ビザが許可されないという事態にならないように、書類選考や面接の時点から適正な判断をすることをお勧めいたします。