ホテル・旅館業において、外国人労働者を雇用したい場合には、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技術・人文知識・国際業務ビザ)が該当することになります。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技術・人文知識・国際業務ビザ)とは、自然科学(理系)や人文科学(文系)の分野の業務や申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合に該当します。そのため、ホテル・旅館業界において外国人労働者を雇用したい場合には、「自然科学又は人文科学の分野に属する知識を必要とする業務」又は「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」に該当し、その結果、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技術・人文知識・国際業務ビザ)に該当します。
各基準として、一般的には以下のとおりです。
- 従事しようとする業務について、当該技術又は知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
- 従事しようとする業務について、当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了したこと。
※ただし、「専門士」又は「高度専門士」の称号が付与された者に限られる。 - 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
②申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合
- 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
- 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。
※ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は除く。 - 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
ホテル・旅館業において、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の許可を得る(外国人労働者を雇用する)ためには、これらの基準を満たす必要があります。
これらの基準において、もっとも重要となるものの一つとして、以下のことが挙げられます。
①学歴に基づいて申請する場合
「学習内容と従事する業務の関連性」
②実務経験に基づいて申請する場合
「実務経験と従事する業務の関連性」
上記①学歴に基づいて申請する場合には、後述の立証資料のうち、「成績証明書」において履修した科目とこれから従事する職務内容を考慮した上で、関連性を判断することとなります。
※なお、4年制大学ではなく、専門学校を卒業した場合には、関連性がより一層厳格に審査されます。
上記②実務経験に基づいて申請する場合には、後述の立証資料のうち、「在職証明書」の職務内容とこれから従事する職務内容を考慮した上で、関連性を判断することとなります。
【関連性の判断における留意点】
- 研修の一環としての活動が、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技術・人文知識・国際業務ビザ)の活動に該当しない場合
→ 原則として、認められないが、採用当初における研修や研修の一環である場合においては、それらを立証することにより、許容されうる。 - 宿泊客の荷物の運搬等を行うことにより、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技術・人文知識・国際業務ビザ)の活動に該当しない場合
→ これらの業務を行うことで直ちに入管法違反になるわけではなく、一時的な付随業務である場合には許容されうる。(例えば、フロント業務に従事している最中に団体客のチェックインがあり、急遽、宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった場合等)ただし、これらの活動が一時的な付随業務ではなく、主たる業務となっている場合には、入管法違反となる。
そして、これらの基準を満たしていることを立証するために、「技術・人文知識・国際業務」の許可を得るための申請時には、下記のような資料が必要になります。
※「海外にいる外国人を技術・人文知識・国際業務の在留資格を得て雇う場合」
<申請人>
- 写真
- パスポート写し
- 専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
- 申請人の学歴職歴、その他経歴等を証明する文書(卒業証明書、成績証明書、在職証明書等)
<雇用主>
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 申請人の活動内容等を明らかにする資料(雇用契約書等)
- 事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
- 勤務先の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先との取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書
- その他の勤務先などの作成した上記に準じる文書
- 登記事項証明書
- 源泉徴収の免除を受ける機関の場合
外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 - 上記を除く機関の場合
- 給与支払事務所などの開設届出書の写し
- 次のいずれかの資料
- 直近3か月の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し)
- 納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料
※上記は申請に最低限必要な書類で、それぞれの状況に応じて追加資料が必要です。
以下、法務省入国管理局により公表されたホテル・旅館業界における許可・不許可事例を掲載いたします。
- 本国において大学の観光学科を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき、月額22万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務等に従事するもの
- 本国において大学を卒業した者が、本国からの観光客が多く利用する本邦の旅館との契約に基づき、月額20万円の報酬を受けて、集客拡大のための本邦旅行会社との交渉にあたっての通訳・翻訳業務等に従事するもの
- 本邦において経済学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の空港に隣接するホテルとの契約に基づき,月額約25万円の報酬を受けて,集客拡大のためのマーケティングリサーチ,外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事するもの
- 本邦において経営学を専攻して大学を卒業した者が,外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後,2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランでの接客研修を経て,月額約30万円の報酬を受けて,外国語を用いたフロント業務,外国人観光客からの要望対応,宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの
- 本邦の専門学校において日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し,専門士の称号を付与された者が,外国人観光客が多く利用する本邦の旅館において月額約20万円の報酬を受けて,フロントでの外国語を用いた案内,外国語版ホームペ-ジの作成,館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの
- 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し,専門士の称号を付与された者が,宿泊客の多くを外国人が占めているホテルにおいて,修得した知識を活かしてのフロント業務や,宿泊プランの企画立案等の業務に従事するもの
- 海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年間従事していた者が,国際的に知名度の高い本邦のホテルとの契約に基づき,月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン,宣伝・広報に係る業務に従事するもの
- 本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が,本邦のホテルに採用されるとして申請があったが,従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ,主たる4業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの
- 本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の旅館において,外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが,当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており,申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となったもの
- 本邦で商学を専攻して大学を卒業した者が,新規に設立された本邦のホテルに採用されるとして申請があったが, 従事しようとする業務の内容が,駐車誘導,レストランにおける料理の配膳・片付けであったことから,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの
- 本邦で法学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の旅館との契約に基づき月額約15万円の報酬を受けて,フロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の館内案内等の業務を行うとして申請があったが,申請人と同時期に採用され,同種の業務を行う日本人従業員の報酬が月額約20万円であることが判明し,額が異なることについて合理的な理由も認められなかったことから,報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められず不許可となったもの
- 本邦の専門学校において服飾デザイン学科を卒業し,専門士の称号を付与された者が,本邦の旅館との契約に基づき,フロントでの受付業務を行うとして申請があったが,専門学校における専攻科目と従事しようとする業務との間に関連性が認められないことから不許可となったもの
- 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し,専門士の称号を付与された者が,本邦のホテルとの契約に基づき,フロント業務を行うとして申請があったが,提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ,これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの