社会保険労務士コラム

外国人社員の労働条件通知書・雇用契約書の作り方のコツ

  • 2026.4.28


外国人社員の労働条件通知書・雇用契約書の作り方のコツ


【技人国|福岡の企業向け|社労士×在留手続きの専門家が解説】

はじめに

外国人社員、とくに
技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国」)
の在留資格で働く方については、日本人社員と同じ感覚で労働条件通知書や雇用契約書を作成すると、
在留資格の基準適合性の面で問題が生じることがあります。

とくに、
在留資格変更許可申請(例:留学→技人国)や、転職を伴う在留期間更新許可申請
では、契約書の内容が
学歴・職歴との関連性や、日本人と同等以上の報酬
といった基準に適合しているかが審査されます。

福岡では、製造・物流・飲食・サービス業など、
現場作業が多い業界で技人国を採用する企業
が増えており、業務内容の書き方や給与の扱いに起因する不許可事例も見られます。

本記事では、行政書士の手続きそのものには踏み込まず、
社労士としての労務管理の視点と、在留手続きの専門家としての基準適合性の視点
から、外国人社員の労働条件通知書・雇用契約書を作成する際のポイントを整理します。

1. 外国人社員の契約書で起きやすい3つの問題

① 業務内容が抽象的すぎる(ズレの原因)

外国人社員の契約書で最も多いのが、
業務内容の書き方が抽象的すぎるケース
です。

例えば、

  • 「事務全般」
  • 「営業補助」
  • 「店舗運営に関する業務」

といった記載は、在留資格の基準適合性、特に
学歴・職歴と業務内容の関連性
を判断しづらく、審査上も不利になりやすい表現です。

技人国では、大学・専門学校で学んだ内容や職歴と、実際の業務内容との関連性が重視されるため、
「何をしているのか」が具体的に分かる書き方
が必要になります。

② 給与欄が在留資格と整合していない(日本人と同等以上が前提)

技人国では、法令上
「日本人と同等以上の報酬」
が求められます。

そのため、
給与の高低そのものが更新審査の中心ではない
一方で、
日本人と同等以上かどうかという意味では、給与の高低も審査対象
になります。

さらに入管は、
「在留資格に係る活動を継続して行っているか」
を重視します。

所得課税証明書の給与収入が契約書の給与より大幅に低い場合、入管は次のような可能性を推測します。

  • 欠勤・遅刻・早退が多い
  • 長期休職している
  • 会社側の稼働不足
  • 契約どおり働いていない期間がある

ただし、
病気による休職・母国への一時帰国・産休育休
などは「正当な理由」に該当し、問題ありません。

入管法22条の4では、

正当な理由なく3か月以上活動していない場合、法務大臣は在留資格を取り消すことができる

と規定されています。

したがって重要なのは、
正当な理由なく長期間働いていない状態を作らないこと
です。

③ 契約書と実態の不一致(業務内容・就業場所のズレ)

技人国の審査では、
契約書に記載された内容と、実際の業務・就業場所が一致しているか
が重要なポイントになります。

現場では、次のようなズレが起きがちです。

  • 契約書では「企画・管理」→ 実態は「現場作業」
  • 契約書では「事務」→ 実態は「接客・レジ」
  • 就業場所が変わっているのに、契約書を更新していない

こうしたズレは、
申請書に記載する業務内容や就業場所が、前回の申請内容と異なることで表面化
し、更新時に説明を求められることがあります。

2. 在留資格と契約書の関係

契約書の変更=在留資格の変更が必要、ではない

技人国は「技術・人文知識・国際業務」という名称のとおり、
文系・理系の幅広い専門業務を含む在留資格
です。

そのため、

  • 単純労働ではないこと
  • 学歴・職歴との関連性があること

といった条件を満たす限り、
配置転換や業務内容の変更があっても、直ちに在留資格変更が必要になるわけではありません。

重要なのは、
「その業務が、技人国の基準に適合し続けているかどうか」
という点です。

基準適合性を失う典型例(理系→文系への配置転換)

例えば、次のようなケースは注意が必要です。

  • 理系の大学を卒業し、技術者として採用された
  • その後、経理・総務などの文系業務に配置転換された

この場合、
学歴と業務内容の関連性がなくなり、技人国の基準適合性を欠く
可能性があります。

結果として、
在留期間更新が不許可となるリスク
が生じます。

3. 労基法と契約書の関係

労働条件通知書で必ず明示すべき事項(正確版)

労働基準法15条および労働基準法施行規則5条に基づき、次の事項は書面で明示する必要があります。

  • 労働契約の期間
  • (有期契約の場合)契約更新に関する事項
    ・契約更新の有無
    ・契約を更新する場合の判断基準
    ・通算契約期間または更新回数の上限の有無と内容
  • 就業の場所・従事すべき業務(変更の範囲を含む)
  • 始業・終業時刻、休憩時間、所定労働時間、休日、休暇
  • 賃金の決定方法・計算方法・支払方法、締切日・支払日、昇給
  • 退職に関する事項(解雇事由を含む)

※社会保険の適用は労基法上の必須明示事項ではありませんが、実務上は必ず記載します。

固定残業代の書き方(誤解が多いポイント)

固定残業代については、日本人社員以上に
外国人社員が誤解しやすい項目
です。

契約書・労働条件通知書には、少なくとも次の点を明確に記載する必要があります。

  • 固定残業代の金額
  • 固定残業代に含まれる時間数
  • その時間数を超えた残業については別途支給すること
  • 固定残業代が基本給に含まれていないこと

固定残業代制度を理解していない場合、

「残業していないのに残業代が支払われている理由が分からない」

といった誤解が生じやすく、説明不足はトラブルの原因になります。

試用期間・就業場所・業務内容の書き方(よくある誤解)

  • 試用期間中の業務内容
    本採用後と大きく異なる業務をさせる場合には、その旨を説明しておくことが望ましい。
  • 就業場所の複数記載
    複数の事業所で勤務する可能性がある場合には、「福岡県内の各事業所」など、
    変更の範囲
    も含めて記載する。
  • 業務内容の範囲の書き方
    専門業務を中心に、その周辺業務も含めた二段構成で記載する。
  • 誤解:試用期間中は社会保険・雇用保険に加入しなくてよい
    これは法的に誤りであり、
    外国人社員も日本人社員と同様に、要件を満たせば加入が必要
    です。

4. 業務内容欄の書き方|ズレを防ぐ実務ポイント

業務内容欄は、
在留資格の基準適合性と、労務管理の両方に直結する重要な項目
です。

  • 学歴・職歴との関連性が分かるように書く
    例:情報工学専攻の卒業者であれば、「業務システムの設計・開発・運用」など、
    専門性の根拠が明確になる表現にする。
  • 専門業務+周辺業務の二段構成にする
    例:「〇〇に関する企画・立案およびそれに付随する事務業務」など、
    主たる専門業務と、それに関連する周辺業務をセットで記載する。
  • 現場作業などの単純労働は技人国の活動範囲外であるため記載しない
    製造ライン作業、荷下ろし、清掃、接客中心の業務などは技人国の対象外であり、
    契約書に記載すること自体が不適切となる。

福岡では、製造・物流・飲食など、

現場作業が多い業種で技人国を採用するケース

が増えているため、業務内容欄の書き方には特に注意が必要です。

5. 給与欄の書き方|在留資格と整合させるコツ

給与欄では、
日本人と同等以上の報酬であること
を前提にしつつ、次の点を意識して記載します。

  • 基本給と各種手当を区分して記載する
  • 固定残業代がある場合は、その金額と時間数を明示する
  • 賞与・昇給の有無を明確にする

また、所得課税証明書の給与収入が契約書の給与より大幅に低い場合には、
入管は
「在留資格に係る活動を継続して行っていないのではないか」
と推測することがあります。

ただし、
病気による休職・母国への一時帰国・産休育休
などは「正当な理由」に該当し、問題ありません。

入管法22条の4では、

正当な理由なく3か月以上活動していない場合、法務大臣は在留資格を取り消すことができる

と規定されています。

したがって重要なのは、
正当な理由なく長期間働いていない状態を作らないこと
です。

6. 契約書と実態の一致を保つために企業ができること

契約書と実態の一致を保つためには、次のような運用が有効です。

  • 業務内容の棚卸しを定期的に行い、専門性が維持されているか確認する
  • 配置転換を行った場合には、その理由と内容を記録に残す
  • 勤怠と給与の整合性を確認し、契約どおりの稼働になっているかをチェックする
  • 在留期限の3か月前から申請が可能なため、早めに契約内容と実態を確認しておく

これらはすべて、

日々の労務管理の範囲で対応できる内容

であり、結果として在留資格の取消リスクを下げることにつながります。

まとめ

外国人社員、とくに技人国の在留資格で働く方の労働条件通知書・雇用契約書は、
労基法の遵守

在留資格の基準適合性
の両方を満たす必要があります。

とくに、

業務内容の書き方、給与欄の整合性、配置転換の扱い、稼働実態の管理

は、在留資格の審査に直結する重要なポイントです。

福岡の企業では、現場作業が増えやすい業界構造もあり、

「日本人と同じ感覚」で契約書を作成すると、思わぬところで在留資格の基準適合性を欠く

ことがあります。

外国人社員の契約書について不安がある場合は、

労務管理と在留資格の両方を理解している専門家に一度ご相談いただくことをおすすめします。


外国人雇用の労務管理については、

外国人労務のポイント

をご覧ください。


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